【目的】 前報においては、軽水炉圧力容器鋼の照射脆化機構に関する基礎的知見を得るため、純鉄、Fe-Cu 2元系合金を用いて、中性子照射硬化挙動について報告した。今回は、Fe-C、Fe-C-Cu系モデル合金についての実験結果を中心に報告する。
【方法】 純鉄、Fe-0.35C、Fe-0.3Cu、及びFe-0.35C-0.3Cuの4種類のモデル合金をアーク溶解にて作製した。それぞれ氷水中急冷(Q)若しくは急冷後焼鈍(QT)を施した後、JMTR多分割制御照射を行った。照射は、温度一定(190℃)、同一フラックスで行った。照射量は1.9x1017、4.2x1018、1.4x1019、3.2x1019n/cm2の4種類である。照射後試験として、マイクロビッカース硬さ試験、陽電子寿命測定及びTEM組織観察を行った。
【結果】 Fe-0.35C及びFe-0.35C-0.3Cuの硬さ試験の結果、QT材は C を添加していない試料とほぼ同様の照射量依存性を示した。一方、Q材においては、C を添加していない試料やQT材に比べて2〜3倍にも及ぶ大きな硬さを示した。Fe-C合金の陽電子寿命測定結果を2成分解析すると、Q材、QT材共に、照射量の増加に伴い、長寿命成分の寿命(t2)が増大し、強度(I2)が減少する傾向が見られた。これに対し、Fe-C-Cu合金(Q材およびQT材)においては、t2及びI2に系統的な照射量依存性は認められなかった。Q材とQT材を比較した場合、Fe-C合金においては、I2に顕著な差が見られ、QT材のI2はQ材の約3倍の値を示した。一方、Fe-C-Cu合金においては、QT材およびQ材のI2はほぼ等しいが、t2に違いが見られ、Q材においては約200ps、QT材では約300psの値を示した。なお、Fe-C-Cu合金のt2の値は照射量が変化してもほぼ一定の値を示した。